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陣内病院ブログ

透析室の熊本地震〜余震の中の透析〜

2016.06.19

熊本地震では、
余震が地震発生後2週間で1,000回を超えた、
というくらい余震が多かったです。

それも内陸震源直下型特有の突き上げるようなタテ揺れの後、
横にグラグラ揺れ始める感じ。
地震発生後2週間は、これが5〜10分おきに来ていました。

この間の透析診療では、揺れる度に、
患者さんやスタッフが携帯するスマフォから一斉に
緊急地震速報の警報が鳴り出し、
皆が一様にスマフォの画面を確認する中、
スタッフが、
「地震は1分も続きません。落ち着いてください。
 ベッドから落ちないように、ベッド柵にしっかりつかまってください。」
と声をはりあげる、という光景が
それこそ5〜10分おきに繰り返されていました。

上村内科クリニックでの透析風景

上村内科クリニックでの透析風景

そのうち、スタッフの地震対策の声かけのセリフを
患者さんが暗記して一緒につぶやける(笑)までに常態化し、
スマフォの画面を見なくても「今のは3」などど震度がわかるようになり、
緊急地震速報の音もOFFる方が増えていき、
非常事態の日常化という異空間が広がる日々が続きました。

患者さんがいるベッドも、
透析回路から外れることが危惧されるほど
大きく動くことはありませんでした。

実際、当院の透析室でも、震度6強の本震の際に、
キャスターロックをかけたベッドが動いたのは15cmほど。
機械室やスタッフデスクは悲惨な状況でしたが、
透析室内に限っては、さほど混乱は見られません。

震度5までの揺れであれば、
透析継続に大きな支障はありませんでした。

幸い、本震後は震度6を超える地震はなかったため、
透析離脱が必要になる事態もなく、
患者さんも、非常に落ち着いて透析を受け、
地震対策行動を取っていただけました。


ただ、避難所生活や車中泊を余儀なくされた患者さんでは、
やはり感染症や心疾患の急性症状が出る方が発生しています。

水や食料の配給が不十分ですし、
夜は余震の度に目が覚め、そこから
自宅被害と先行きを考え始めると眠れなくなる、という状況。

どうしても心と体に負担がかかります。

透析治療中が一番安心できた、
と言われる患者さんもいらっしゃったようです。

そんな中、
自宅被害が少なかった2型糖尿病で肥満型の透析患者さんでは、
5kg位体重が増えてくる方が続出。

  “市内全域で水も食べ物も満足に手に入らないこの非常事態で
 何で太ってくるんだ・・・”
とひそかに思いながら「食事はどうされてましたか?」と問診すると、
「食事は食べてない」「水は手に入らない」
という回答が返ってきます。

となると、これって、

  普段から糖質食品(おそらく塩分も多いスナック菓子)が
  非常事態にあっても途切れないくらい常時家にある。
      ↓
  普段からペットボトル飲料(おそらく炭酸系)が
  非常事態にあっても途切れないくらい常時家にある。
      ↓
  でもそれらは「食事」ではないし「水分」でもない。

・・・ということなんだろうな〜と。

改めて肥満がある2型糖尿病患者さんの
食事コントロールのための
生活習慣改善介入指導の難しさを感じるエピソードではありますね。